拠点へと帰って、まず最初に放たれた言葉はこうであった。


「あの黄金のが言っていた言葉……貴様、まだ余に黙っていることがあるな。ファラオに対する無礼と知れ」


玉座に座り宵闇に光る瞳で、目の前にいるディーアを見下ろす。
その瞳から逃げるように、気まずさから下唇を噛んでオジマンディアスから目をそらした。
それは呆れての事か、腹立たしいためか。オジマンディアスから短く息を吐かれた。


「未だ貴様が口をつぐんでいる事、その洗い浚いを今ここで吐け。さすれば貴様の無礼な働き、一度は目を瞑ろう」

「……話します、話すわ。しかし、ファラオ、どうかその答えは明日にできないでしょうか……」


片手で額を抱えながら、そう目の前に君臨するファラオに乞うた。
ディーアの表情には疲れがにじみ出ていた。ラブラドライトの瞳がゆらゆらと揺れている。
恐らく魔力によるものだろう。彼の宝具は脅威だ。ゆえに、魔力供給は他のものよりも遥かに多くなる。魔力は無尽蔵ではない。

「惰弱な」オジマンディアスがその様子を見て呟いた。


「よかろう。その問いは明日に聞く。日が昇る頃には、その身も幾分か回復していよう」


ディーアは一礼をして「感謝します、ファラオ……」と言葉を添えて部屋を出ていった。

一人きりとなった部屋で、オジマンディアスは先が思いやられた。
あれだけ疲れた出る、因果関係にある契約者。召喚者。マスター。ディーア。しかし、魔力消費によるものではない。

オジマンディアスは自分の片手を見下ろした。

魔力供給は行われている。注がれる魔力量も減った気はしない。変わらず、健全なまま注がれている。
ゆえに、あれはただただ体力的問題か。もしくは精神的問題か。あるいは……

オジマンディアスは瞼を下ろした。
日が昇るまで時間がある。それまでは特にすることは無い。
サーヴァントになった今、彼は人間のように眠るという行為の真似事をした。




朝――

日の出が昇り、小鳥がさえずる朝が来た。
誰もが目を覚ます時間に、かのオジマンディアスもその瞼をあげた。まだ、ディーアの姿は見えない。

仕方がないと彼女を待つが、なかなかディーアは現れない。
とうとう待ちきれなくなり、オジマンディアスは溜息をついて玉座から立ち上がった。
ディーアの部屋は知らない。だが、彼らは魔術回路パスで繋がっている。令呪で繋がっている。それを辿ってそう離れてもいない、とある部屋にたどり着いた。


「…………」


扉を開ければ、床に横たわって死んだように眠っているディーア。それだけではない。彼女が眠っている床には魔法陣があり、淡い光を放っている。
その部屋には何もなかった。椅子も、机も、寝台すらも。ゆえに、ディーアは床で倒れ寝ている。


「目を覚ませ、魔術師。余に起こされるなど、いい身分だな」


横たわるディーアにそう言い放てば、やがて瞼をあげた。
朧げな瞳で放たれた声の行方を辿れば、そのにいるのは自分を見下ろすオジマンディアスの姿。


「……ラ、イダー……?」


ディーアが体を起こせば、いままで淡く光っていた魔法陣は光を消した。
未だ朧げな瞳。眠そうに目をこすっている。


「目を覚まし終えたら余のとこへ来い。そこで昨夜の問いを聞く」


オジマンディアスはそれだけ言い捨てると、とっととその部屋を出ていった。
床に座り込んだままのディーアはその様子を眺め、部屋から姿を消すと、考えこむように目を閉じ、頭を抱えた。


「此処は……冬木。第四次聖杯戦争の――世界」

06





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