お見通し



「いつもならサトシの家に来ることも普通だったのに」

いつからかその普通が普通じゃなくなった事に苦笑しながらも
シゲルはサトシのマフラーを片手にインターホンへと手を伸ばしたのだった


「あらぁ!シゲル君じゃないっ!」

「こんばんわ」

「家に来るのなんて久しぶりじゃない?今日は何か用事でもあった?」

笑顔で出迎えてくれた
サトシの母、ハナコに
シゲルは懐かしさを感じながらも
無言で手にしていたマフラーを手渡すと
ハナコは苦笑しながら静かに口を開き

「シゲル君は、このままで良いの?」

「…えっ」

「中学生になってからお互いに距離を置くようになったでしょ?でもお互いに寂しいって思ってるのよね」

「………」

「今までずーっと一緒にいたんだもの、突然距離を置いたらそりゃあ寂しくなるわよ、でも二人とも意地っ張りだから一緒にいたいと思ってもそれが出来なくなっちゃったのね」

自分達を気にかけ、状況を理解していたハナコに驚かせられながらも
シゲル自身どうしたら良いのかわからなくなり黙り込んでいると、突然ハナコが優しく手を握り締め

「久しぶりにご飯食べて行かない?実は今日、おかずを作りすぎちゃって困ってたのよ」

返事をする前にリビングへと引っ張って行くハナコにシゲルは軽く苦笑しながらも

リビングに用意されていた夕食に
更に苦笑する事になるのだった

(ハナコさんには、本当にかなわない)

リビングで目にしたのは
不機嫌なサトシと三人分の夕食だった。




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