獣のような貴方


付き合う前から
彼の愛情表現の仕方は他の男(ひと)とは違っていた
けれどそれが彼の愛し方だと知っている自分にとっては
特に気にすることでもなかった

「おかえり守」

「ただいま士郎」

「じゃあ、さっそくだけど脱いでくれるかな?」

「あぁ」

帰ってきて彼がまず先にする事は
彼いわくマーキング行為らしく
付き合い始めた当初はそんな彼の説明に笑っていた自分もいたが
実際の内容は笑える物ではなかった

ペロッ

「フフッ、しょっぱい」

「そりゃあ汗かいてるしな」

「うん、守の味だね」

彼に言われるがままに服を脱ぎ、下着姿のままベッドへと横になれば
彼は待っていたと言わんばかりに自分の肌を舐め始め

「噛んでもいい?」

「嫌って言っても噛むだろお前は」

「うん、…だって、キスだけじゃ足りないんだ、守が僕の物だってわからせるならキスマークなんかじゃなく噛み痕がいい」

そう言いながら容赦なく首筋を噛む士郎に
守は痛さの余り歯を食いしばっていると突如士郎が自分の腕を守の口元へとあて


「…噛むなら僕の腕を噛めば良い」

「ぃ、やだっ」

「本当に君は頑固なんだから」


士郎の腕を払いのけ
自分の首もとで苦笑している彼に内心苛立ちを感じながらも
もう少しだけだから、と小さく呟かれた言葉に
守は目をとじて、これからくる痛みを待つのだった。


(…明日はどこを噛もうかな)

(まるで獣だな)

(男は狼だからね)

(…お前に限っては意味が違う気がする)





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