名前


「いい加減、大人になったんだしお互いの事を名前で呼ぼうよ」

「…ぇっ」

「キャプテンは嫌?」

「嫌じゃない…けど」

嫌ではないが
恋人、つまりは好きな相手の事を名前で呼ぶことが
守にとっては何だか気恥ずかしい事で

吹雪が名前で呼び合おうと言うのなら…と
頭では納得しているものの
中々行動には移せずにいた。

「…嫌なら別に無理にとは言わないんだしハッキリ言ってくれて良いんだよ?」

(どうしよう…少し機嫌悪くなってないか…?)

「…僕ちょっと外の空気吸ってくるね」

長年付き合っているのに
いつまでもキャプテンや吹雪、なんて呼び方は
吹雪にとっても嫌だと言うことはわかっていた

だから
ハッキリしない自分に苛立つ気持ちも十分に理解できた

「まっ…待って…士郎っ!」

だからこそ
このまま彼を行かせてしまったら
いけないような気がして
気が付けば必死に彼の名を呼んでいる自分がいた。

「やっと呼んでくれたね」

「…えっ?」

「まもるが中々、僕の名前を呼んでくれないから少し荒療治をしてみました」

「荒療治…?…えっ?」

つまり彼は自分に名前を呼ばせるための芝居をしていた、という訳で

「ゴメンね」

「…俺っ、士郎に嫌われたかと思って…」

「僕が守を嫌いになるわけないよ、こんなに君の事が好きなのに」

「俺はこんな意地悪する士郎は嫌いだっ」

けれども彼がこんな真似をする程に
悩ませていたのは自分な訳で

「でも、俺も悪いわけだからおあいこな!」

「うん」


チュッと軽くキスをしてきた士郎に恥ずかしさで顔を赤く染めながらも
目の前で意地悪く微笑む彼に
守もキスを返すのだった。


(もうしないからなっ!!!///)

(可愛い//)



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