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それは義理チョコ


毎年バレンタインデーには
お互いにチョコを作って渡すのが恒例で

昨年まではお互い以外にはチョコを渡す人なんが居なかった

けれど
今年は自分の分と他の誰かの分を用意しているサトシに
今年はいつもと違うと違和感を感じながらも
他の誰かが自分が真っ先に想像した男じゃないことを願いながら
湯煎したチョコレートと生クリームを混ぜ合わせるのだった。

「サトシは今年何を作るつもりなんだ?」

「サトコが生チョコを作るから俺はガトーショコラを作るつもりだけど」

「そっか!」

嫌だったか?と言って不安げに見つめるサトシに首を振って否定すれば
サトシはニッコリと微笑むと小麦粉をふるいにかけ始め
もう1人の相手が誰かを聞きそびれたサトコは
ただひたすらその相手がママでありますようにと願っていた


「お菓子作りって楽しいけど疲れるよな」

ガトーショコラが焼き上がるのを待ちながら
お互いに向かい合う状態でテーブルに腰掛けると

そう言って机にうつ伏せるサトシにサトコは静かに口を開き

「今年はチョコをもう1つ作ってるみたいだけと、誰に作ってるんだ?」

「えっ…?…あー//、あれはそのっ」

「男?」

うっすらと顔を赤く染ながら言いごもるサトシに苦笑しながらも
チンッと鳴ったレンジへと向かうと二つ並んだガトーショコラを見つめながら
サトシからこれを受け取る相手を思い浮かべて眉を寄せるサトコだった。



(サトシがお前にチョコを作ったのはただの義理なんだからな!!!)

(そう言われるとまるで義理じゃないみたいに聞こえるよ)

(義理だ馬鹿!!!)

(サトコうるさいっ)


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