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しゃっくり


「ック!」

「サトシ?」

放課後の生徒会室
それぞれがプリントの整理や作成作業をする中で
突然聞こえたしゃっくりに
作業をしていた手を止めると
口を押さえながら苦しそうにしゃっくりをするサトシへと視線を向け

「何か驚く事でもあったのかしら」

「サトシ先輩がしゃっくりする所って可愛いっすね」

「うわっ、ゴールドの変態」

会長の椅子に座っていたサトシの周りへと集まり
しゃっくりを繰り返すサトシにどうしたものかと話していると
ハルカがペットボトルを机の上へと置き

「鼻を掴みながら水を飲むと治るって聞いたことがあるかも!」

「あぁ!それ俺も聞いたことあるっす!(嘘臭くてやったことないけど)」

「ヒック…飲むックだけで良いヒックのかッ?」

ペットボトルを手にハルカが言った通りにするサトシ

「どう?」

「自分じゃわかんないけど、治ったのか?…ヒック!」

「駄目だったみたいね…」

いまだにしゃっくりを繰り返すサトシの姿に
ハルカは謝りながらサトシに抱きつくと
それを見たゴールドがズルイだなんだと騒ぎはじめ

「あーもう、うるさーいっ!!!!!」

「……ヒカ、リ?」

いつもならどんなに騒がしくても笑って見守っていたヒカリが珍しく声を荒げて怒る姿に
サトシ、ヒカリ、ゴールドは驚いて黙り込むと
ヒカリは三人を見つめながらニッコリと微笑み

「どう?ビックリしたっ!?」

(どうもこうも…)

(ビックリよりも恐怖の方が大きかったかも)

「…ヒック!ック!」

「「「……ぇ。」」」

ヒカリのしゃっくりを止める方法に内心苦笑するハルカとゴールドを他所に
ヒカリは無言のまま俯いているサトシの顔を除き込むと

サトシは泣きながら先程よりも酷くなったしゃっくりを口で押さえながら我慢していて

「どうしよぅ!!!」

「どうするも何も、ヒカリ先輩があんな事するからっ!」

「ビックリさせるって言ってからビックリさせる人なんか何処にもいないわよっ!!!」


確かに、とヒカリの言い分に納得しながらも
もうしゃっくりを止める方法が見つからない三人がどうしようかと頭を悩ませていると
何処に行っていたのか今まで姿の見えなかったシゲルが静かに入口で自分達の行動を見つめていて

「あー!!!シゲル先輩っ!!!」

「煩いなぁ、廊下にまで聞こえていたよ」

「そんな事よりも」

「いったい今まで何処に行ってたのよっ」

「タケシの所にプリントを持っていったついでに少し話し込んでしまってね」

それにしても面倒な事になってるみたいだね、と苦笑しながらそう言うと

苦しいのか軽く涙を浮かべながらしゃっくりを繰り返すサトシの傍へと近付いていくと
サトシは口を両手で防ぎながら激しく首を左右に振り始め

「…サートシちゃん?」

「っ…ゃだっ、ック」

「しゃっくりを100回続けてすると死んじゃうんだよ?」

「うぇっ…それも、ゃだっ」

何やらしゃっくりを止めようとしているシゲルとは違い
逆にシゲルから逃げるように距離を取るサトシにハルカ達は何事かとただ大人しく二人のやりとりを見つめていると

暫くして、とうとう壁へと追い込まれたサトシがシゲルによって逃げ場を奪われている姿はまさに
今からキスでもしそうな構図で

(…まさか、サトシが口を隠してシゲルから逃げてたのって…)

(まさか)

「サトシ逃げてぇー!!!!」


ちゅっ


「んん゙ぅー?!!////…ふぁっ…んぅあ…んんっ//」

「ッハ…ご馳走さま」

「「「な、何てことしてんだー!!!!」」」

へたりとその場に座り込むサトシとは裏腹に
満足気に微笑んでいるシゲルに三人はそう怒鳴り叫ぶと
シゲルはそんな三人を鬱陶しそうな表情で見つめながらも
1人座り込んでいるサトシに指を指すと
全員がサトシへと視線を向け

「ぇ、サトシ先輩のしゃっくり」

「…止まってる?」

「サトシのしゃっくりって、昔からキスすると止まるんだよね」

「だからって皆がいる前で…っ、シゲルなんて嫌いだー!!!!」

しゃっくりは止まったものの
周りの沈黙と恥ずかしさに泣き叫ぶサトシとは裏腹に、シゲルは会長席へと腰を下ろすと満足気に微笑んでいた。


(何はともあれ止まったんだから良かったじゃない)

(良くないっ!!!)

(((………。)))


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