ポケモンSS | ナノ
堪えられなくてゴメンなさい
「いってらっしゃい」
そう言って彼女は微笑んで僕を見送る
普通なら
これは朝の見送り風景なのだから
おかしなところなど何処にもないだろう
だけど
「ああ、行ってくるよ」
僕がこれから向かうのは
職場ではなく彼女以外の女の所
「残業で遅くなるならメールしてくれよ?」
「わかってるよ、その時はちゃんと連絡する」
「ああ」
そこまで馬鹿じゃない彼女の事だ
きっと僕が浮気してる事を知っているだろうに
彼女はいつもどおりに微笑んで僕を見送っていた
「…バイバイ、シゲル」
背後から微かに聞こえた彼女の声に
シゲルは足を止めて何だと振り返るが
振り返って見ると彼女は先ほどと変わらず笑顔で自分を見送っていて
(空耳か…?)
「早く行かないと会議に遅れるぞっ」
「あぁ、行ってきます。」
「行ってらっしゃい」
そんな半日前の会話を最後に
彼女は僕の前からいなくなった。
そして、帰ってきてテーブルの上で見つけたものは
ゴメンとだけ書かれたメモと離婚届け
(謝るのは僕の方だ)
(もうきっと笑って貴方(シゲル)を見ることが出来ない)