ポケモンSS | ナノ
卑怯者


「ゴメン、今日は一緒に帰れない…かも」

「…何でって聞いてもいいかな?」

ゴメン、と両手を合わせて謝る幼馴染みに
シゲルは明らかに嫌そうな顔を浮かべると
真剣な表情でそう問うと
サトシは制服のポケットから一枚の手紙を出すと
シゲルはその手紙を奪うようにサトシの手から取ると
サトシの制止も聞かぬまま手紙の内容に目を通すのだった。


「…君はこの手紙の差出人の所に行くから、僕とは帰れないって事かな?」

「……待たせちゃ悪いし」

「サトシは何て返事するつもりなんだい?」

「っえ?」

何を聞いてるんだと後悔しつつも
目の前で自分の質問に驚くサトシに
僕は何だか苛立ちを感じ、気が付けば手にしていた手紙を破り捨てていた。

「…おまっ!?」

「帰るよサトシ、ハナコさんを心配させちゃ駄目だ」

ハナコの名を出したのは
サトシが母の事を出されると断れないことを知っているから

「でも…」

「ハナコさんより見知らぬ男が大事?」

ハナコの名前を使い
サトシを思い通りにする僕はなんて卑怯ものなんだろう

でもそれでも
彼女(サトシ)と自分以外の男が一緒にいる所なんて
考えるのも、見るのも嫌だった

「さぁ、帰ろうサトシ」

「…ぅん。」

だから僕は卑怯な手を使ってでも
彼女の手を離さない


そう、ずっとずっと永遠に。
僕は卑怯ものと呼ばれ続ける。


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