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物心ついた頃には母親と呼べる人は既に亡く他界していて

そのせいで
二人の弟が侘しい思いをしない様にと
慣れない家事や世話に戸惑いながらも
俺なりにあらん限りの愛情を二人の弟へと注いできた

「まもる、まだ-?」

「もうすぐ出来るから待ってろっ」

おぼつかぬ手で作った歪な形のホットケーキでも
美味しいと言って天使の様に微笑む姿に

どうかこのまますくすくと育って欲しいと願いながらも

高校3年の春
その願いを激しく取り消したいと俺は心の中で願っていた

「王子と姫の登校よっ!」

「相変わらず王子はカッコいい-っ」

「姫も愛らしいわぁ」


どうやら俺は自身に注ぐ愛情を
この二人に注いでしまったらしく

俺の愛情を受けて育った弟たちは俺以上にたくましく成長し

今では
学園内や近隣住民からも
王子と呼ばれ

そんな王子と呼ばれる弟たちに挟まれて登校する俺にまで
いつの間にか姫とゆう名前が付けられていた

「ねぇ士郎くん、良かったらこれ食べて貰えないかなっ」

「私もアツヤくんにこれっ」

けれどそんな弟たちにも
懸念すべき問題が1つ

「「まもるの作ったも愛情弁当があるから他の物は食べない事にしてる(んだ)」」

「今日は一体どんなお弁当なのっ?!」

「今日はねサンドイッチとサラダとまもるが作ったデザートだよ」

「姉ちゃんの弁当があれば今日も一日頑張れる!」

注いだ愛情は歪んだ形(シスコン)として俺へと返還されていた。


「…それじゃあ俺は教室に行くから部活でな」

「え!」

「昼飯一緒に食わねーのかよーっ!」

背後でそれぞれ文句を言っている二人を無視しながら
放課後並みに疲れた体で教室へと向かうのだった。


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