E.キミと俺。

教室の扉の近くに、亮ちゃんと大ちゃんと中身柚木さんの俺がいる。
周りから見たら、なんの変哲もないただの仲良し友達だけど、俺の目にはなんだか複雑に見えて仕方がなかった。

少し顔がひきつってるのを見ると、さっき俺が思ったことと同様、きっと柚木さんも何も知らずに話しかけてくる亮ちゃんと大ちゃんに申し訳ないって思ってるんだと思う。

「くすけん遅かったな、寝坊したのかよ?」

ふざけながら柚木さんの頭に手を置く大ちゃん。
ああ、されなれてないんだろうな。
すごい気まずい顔してる、柚木さん。
いや、気まずい顔してるのは周りから見たら俺なんだけど。

「なっ、何してんだよ!」

慌てて大ちゃんの手をどける柚木さん。
あ、一応俺のキャラは保ってくれてるんだ。

ホッとしてるのもつかの間。
なんか亮ちゃんが真顔で柚木さんを見てる←
バレた?そんなわけねぇ!
柚木さんの演技は完璧だったはず。
うん、ちょっといろいろ違ったけど。

だけどなんだか亮ちゃんの目が怪しすぎるから、俺は我慢できなくなって勢いよく席を立った。

「り、りんちゃん!?」

目を見開いて俺を見る大嶋さんに、俺は小さく微笑んだ。

「ごめん、すぐ戻るからっ」

はにかみ笑いを浮かべて、大嶋さんに背を向け、向かうは教室の扉の近く。

「りんちゃん.....なんかカッコいい」

そんな言葉を大嶋さんの口から発せられてたなんてことは、もちろん俺にわかるはずがない。





3人の近くに歩み寄ると、俺は亮ちゃんと大ちゃんの顔色を伺うことなく柚木さんの手を引いた。
だって、見たらついボロが出ちゃいそうだから。

「楠野.....くん!」

ダメだっ、とりあえず呼んでみたけど、そもそも自分の名字でくん付けとか死んでも言ったことなかったのに、いま俺普通に言っちゃってるよ!

自爆しに来たようなものだ、余計怪しまれる。

「あ、おはよう、柚木さん!」

にこっと微笑んで俺の手を握り返してきた柚木さん。
自分に手を握り返されるなんて、なんかむちゃくちゃ複雑なんだけど!

できるだけ自然を装って、俺は柚木さんとアイコンタクトを取ろうと試みる。

......と、

「.....あ、あぁ!この前借りてた本ならもうちょっと待って!まだ読み途中なんだってっ」

そう言いながら、さり気なく廊下に俺を引っ張って行く柚木さん。

よかった!気まずい雰囲気から抜け出せる。
でもこれって.....
教室から出る瞬間に、痛いほど突き刺さるクラスメートからの視線。
逆に怪しまれたんじゃない!?


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