何でか喫煙席にいたその後輩達と一緒に禁煙席に座ることになった。
同級生は完全にびびってるし、何も言い出せないみたいだ。
…当たり前か、俺もぶっちゃけ同級生と同じ立場だったら泣きたくなってる。
「あー…俺の後輩、と、中学の同級生」
橋渡しのように説明すれば、後輩達はその厳つい格好とは思えないフレンドリーさで自分達を自己紹介していく。
同級生もそれにつられて大丈夫だと思ったのか、やっと石化が解けたらしく、いつもよりはテンション低めにそれに返していた。
「司センパイ、桜ちゃんですよね?」
「そうそう」
桜は俺の膝の上で首を傾げていたから、あっちゃんとりっくんのお友達だよ、と言うと、ぱっと顔を綻ばせ。
「さとうさくらです!ろくさい!」
と、何とも可愛く声を上げた。
「可愛いだろ!可愛いだろ!」
「可愛いっすね!」
「嫁にはやらん!」
「ういっす!」
そのやり取りで何故かそこに同級生が乗ってきたりしていくうちに、特に男子達は仲良くなれたようだった。
滅多に食べないパフェを一生懸命頬張る桜が可愛くて気付かなかったが、何やら後輩達はどこかに連絡していたらしい。
「あ、陸さん来るって」
「え、緒方来るの」
「どちら様?」
「高校のやつ」
「さっき言ってたりっくんさんか」
「そうっすね」
緒方が来るってことは、蒼志も来るんだろうか。
「でも蒼志さんはデートらしいんで来れないみたいっす」
残念ですね。
本当に残念そうな顔で言う後輩に、正直、俺は何も答えられなかった。
デート、だって。
何だそれ。
聞いてない。
当たり前だ。
そんなこと、報告する必要なんてないし。
じゃあ、…今日は、夕飯、食べに来ないのかな。
「つーちゃん?」
俺もちょっとつまんだパフェを食べ終え、こちらを見上げてくる桜の頭を撫でながら、携帯を開いて時間を確認する。
おかしな時間じゃない。
「あー、ごめん、でも俺と桜、もう帰んないと」
「え、もう?」
「夕飯の支度あるからさ」
嫌に騒ぐ心臓を悟られないよう、財布から小銭を取り出して、机の上に置いた。
「またな」
「うん、夏休みまだ遊ぼうねー」
「連絡するー」
桜の手を引いて、ひんやりとした金属の扉を開けた。
むっと熱気に包まれて、夏だと、思い知った。
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