「え、あんたも浅高なわけ?」
「まあな」
「うわー…初めて知った。普通それだけの髪色だったら気付くと思うんだけど」
「この間染めた」
「自分で?」
「兄貴が美容師だからやってくれんの」
「へぇ」
台所で包丁片手に野菜を刻む。リビングから聞こえる声と会話しながら、色々なことを知った。
実はこの不良が、同じ学校だと言うこと。
あと、見た目に反して話しやすいと言うこと。
敬語もいつの間にか取れていて、本当に同級生と話しているようだ。いや、同級生なんだけどさ。
「ただいまー」
「あ、帰ってきた」
玄関を開閉するのが聞こえた。
でもいつも通り迎えに行く桜も寝てるし、俺も今手が離せない。
ごめん、父さん。
「ただい、…おや、あっちゃん、昨日振りだね」
「すんません、またお邪魔してます」
ソファーに座ったまま挨拶を言う不良の膝には桜の頭。いつの間にか、枕を探して奴の膝を見つけたらしい。
一回ぶち切れそうになったけど、怒鳴り声でまさか天使を起こすわけにも行かず、我慢してる俺、超偉い。
「あっちゃん、今日はお泊まりってことで良いね!」
「………いえ、あの」
「お家には連絡してあげるよ?」
「いや、そこらへんは大丈夫っすけど、」
桜も然り、父も然り、言うことが昨日とぶれてないあたり、本当に奴のことを気に入ったんだろう。
まあ、俺も良い奴だとは思ってるし。
「父さん、とりあえず手洗って。手離せないから手伝えないけど、着替えは、」
「ん、大丈夫だよ司、ちゃんとスーツはハンガーだね」
父は小さく笑って、洗面台に向かって行ったようだった。
これで父さんは良し、と。
で、問題は。
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