side 蒼志
甘ったるいいつものカレーを食べて、今日は泊まることもせず、溜り場に足を運んだ。
…些細なことを気にする自分に、嫌気がさす。あいつが女子と仲が良いことだってあるはずなのに、そうじゃないと思い込んでいた。
自分のことは、棚に上げて。
「あっくんまたそんな顔してー」
「るせぇ」
「司ちゃんびっくりしてたじゃん」
気付いていないと思わせることが上手い陸は、意地の悪い顔でグラスを仰いだ。
勘の鋭いこいつのことだ、全部と言わずとも、最小限のことはわかっているんだろう。
「ももちゃんと言えばさぁ」
「あ?」
「モモザキさんと、今どうなってんの?」
「別に、どうもなってねぇよ」
付き合ってた訳でも、何かやましいことをした訳でもなく。
強いて言うなら、そういう関係になりそうになっただけで、恋愛感情があったかどうかは覚えていない。
時々顔を合わせてもとっつきやすい人物ではあるものの。
「百崎さんさ、司ちゃんに興味持ってたよ」
「何かするようなやつじゃないだろ」
「百崎さんはねー」
「…不吉なこと言うな」
「だからさ、俺言ったじゃん、最初に」
普通の、喧嘩とは程遠い、何にも関係のない場所にいた司。
少し引っ張ったのは自分。
…何かに巻き込む可能性だって、大いにあり得る。
「守れればいいけどさ」
「……」
「ここ捨てるか、司ちゃん守るかってなったら、どうすんの」
やけに真剣な陸の表情が珍しかった。
思わず笑うと少しむっとして、茶化すな、と言っているようだ。
「…捨てるに、決まってんだろ」
当たり前だ。
勝手に集まって俺をトップにした勝手な連中のことなんて、俺が知ったことか。
俺だって、勝手にする。
「あっそ、良かった」
「何だよ」
「そういうあっくんに皆ついてきてるからね」
「そうかよ」
「大事にされたい訳じゃないから」
周りを見渡すと、思い思いに話し込む、年齢も関係ない集まり。
喧嘩が好きなやつと、そうでもないやつ、ただそこにいるだけのやつ。
全員が、勝手だ。
「それにしても、ほんとベタ惚れだね」
「……そうだな」
「もっと、そういうことに関しては淡泊かと思ってた」
面倒の一言で大体片づけて、なされるがまま、周りに流されたつもりもなく流されて過ごしてきた。
それが、あいつのことで色々考えることになるなんて。
「俺もそう思ってた」
この前あいつがここに居たことを思い出して、誰にも渡せないと、思った。
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