「あれ?佐藤?」
スーパーに行く道の途中、掛けられた声に振り返る。
そこに居たのは、長い髪を一括りにした女子で。
どちら様ですか、と聞こうとして、でもどこかで聞いたことある声だと首を傾げると、隣に居た桜が笑顔で手を振った。
「ももちゃん!」
「わー!桜ちゃん、ちょっと見ないうちにまーた可愛くなったねぇ」
「えへへ」
ももちゃん。……ももちゃんって。
「……水内?」
「そ、何、わかんなかったの?」
「だって、変わりすぎだろ」
「そ?」
水内は、中学の同級生で、…女子ってちょっとの間にこんなに変わるものなのか。
化粧して、制服着てないから、余計そう見えるのかもしれない。
「これからどっか行くの?」
「スーパー」
「へー、私も行こっかな」
「何でだよ」
「なに、私が行っちゃいけないの?」
「そうじゃないけど、違うとこ行くんだったんだろ?」
「コンビニだからいーの、それに桜ちゃんと会えたし、ねー?」
「ねー!」
……まあ、桜が良いなら、良いんだけど。
にこにこと人懐こい笑顔は、変わってなかった。桜も水内には懐いていて、そういえば、こいつのお下がりで服何着か貰ったなぁ。
「晩御飯なに?」
「たかりに来る気か」
「え、行って良いの!?」
「駄目」
「ケチー」
買い物の最中、水内は桜の手を繋いで、ふたりできゃっきゃとはしゃいでいた。
俺たちに姉妹がいたら、こんな感じだったんだろう。
付き合っていたわけじゃない。
でも、普通の友達にしたら、距離が近かったんだと思う。
あの時は確かに水内が気になってたし、水内も多分、俺と同じだった。
だけど今はやっぱりただ中学が一緒だった同級生で、そういう気持ちがまた降ってくることもなかった。
「ねー佐藤ー」
「んー」
「メアド、変わってない?」
「そのまま」
「夏休みだし、中学のひとたち誘って遊ぼうよ」
「桜連れてくけど」
「いつものことじゃん、みんなわかってるよ」
そういえば、中学の時は今よりもっと桜から目が離せなくて、桜連れてったり、俺の家で遊んだんだっけ。
「なんか、懐かしいよね」
そう思えたのは、俺たちが成長したからだろうか。
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