「蒼志」
「ん」
「……あのさ、」
「何だ」
「………俺、そんな子供じゃないんだけど」
路地から出て、夜なのに明るい繁華街は混み合っていた。
確かにそれに慣れていない俺は蒼志の後をついて行くのさえ大変だったが、だけどこれは解せない。
まるで俺が桜を連れて歩くみたいに、手を繋がれたままである。
はぐれない様にするには有効な手段であることは認めよう。
だけど、俺も蒼志も見た目だけなら大人とたいして変わらない、しかも男同士だ。ちょっとあり得ない。
「歩くの早いか」
「そうじゃなくて」
脚の長さが違うけどそこら辺は相変わらず妙な紳士振りを発揮してくれているから大丈夫だった。
ここにきてまでイケメンか。さぞかしモテるだろうなくそ。
「つーか、恥ずかしいんだけど」
「誰も見てねぇよ」
「そうかもしれないけどさぁ…」
「気にすんな」
そう言われましても。
蒼志は顔も良いから目立つし、後輩君達みたいに慕ってるひともここら辺には多そうだ。
そんなひとたちにばれやしないかと、ひやひやする。
「あと少しで着く」
「……あっそ」
どうやら、離してくれないらしい。
……あと少しなら、仕方ないか。ここではぐれても面倒だし。
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