蒼志と一緒に喧嘩してた人たちと後輩君達は、口々に話して俺の方をちらちら見ながらも、先にどこかへと行ってしまった。
残ったのは未だに腰の抜けてる俺と、それに呆れている蒼志と。
最初は俺を負ぶってくれようとしたんだけどそんな恥ずかしいことも出来ないし、申し訳ないけど俺が立てる様になるまで一緒に待ってくれるらしい。
「…そういえば、桜は?」
「ああ、今日お友達の家にお泊り、ついでに父さんも残業で帰ってこれないってさ」
「だからこんな時間に出歩いてたのか」
「家ひとりだと、ついね」
隣に座る蒼志はそれから一度黙り込んで、何か考えだしてしまった。どうかしたんだろうか。
数分、時間が流れる。
「もう立てるか?」
「ん」
急に立ち上がった蒼志はそう言って俺に手を差し出す。
多分もう大丈夫だからと手を取って、俺も脚に力を入れると、少しだけふらりとするけど歩けないこともない。
「溜まり場にバイクあるから、一回そっち行く」
「へ?」
「こんな時しか、お前連れ回せねぇしな」
ふ、とさらに腕を引かれて距離が縮まって、髪に何かが触れた。……何かスキンシップ、激しくなって、ませんかね、蒼志さん。
疑問を浮かべながら、どこか機嫌の良さそうな蒼志に手を引かれて、暗い路地を出ることにした。
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