「何、…はあ!?」
急ぎ足で俺の元に来るなり、頬を思い切りぐにっと抓られた。
痛いんだけど何するんだ。
「いひゃい」
「何でこんなとこに居るんだよ」
「いひゃいって」
抓ってる手を叩きながら声を上げると暫く眉を寄せて思案して、煮え切らない様子ながらも離してはくれた。
頬がひりひりする。
容赦ないな…。
「で?」
「ああ、うん、連れてきてもらったんだ」
「こいつらに?」
「そう、偶然」
「……そうかよ」
見上げるとどこかバツが悪そうに顔を逸らす後輩君達。
…あ、蒼志が怒ってるからか。
「そんな怒んなって」
「……お前には、」
「ん」
「見せたくなかった」
座ってる俺と目を合わせて、悔しそうな、何て言ったらいいんだろう、哀しそうな、そんな顔をしていた。
口元には殴られた痕と、蒼志か、もしかしたら違うひとの血がついている。
袖でごしごしと拭うと少し痛そうで、その腕を掴まれてしまった。
「……蒼志」
「………何だよ」
「正直、怖かった」
「……」
「でも」
「………」
「………みんなが、惹かれる理由がわかった」
俺を掴む腕が緩んで、だからもう一度、顔をごしごしと拭いてやった。
そうしたら蒼志も俺の頭をぐしゃぐしゃと掻き回して、どうやらいつもの様に戻ってくれたようだ。
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