数人と連れ立って着いた場所は、どっかの路地裏。
怒号と、人が倒れる音。
喧嘩、だ。
どうしてここに連れてこられたのか、こんな、俺の知らない道に。
そう思って周りを見ても、みんな爛々とした目で、ずっと、一点を見つめていた。
薙ぎ払うように殴りつけて、吹き飛ばすように蹴りつけて。
長い手足が、周りの物を全て遠ざける。
蒼志だった。
彼の周りには転がって呻く人間と、一緒になって戦ってる人間と。
知らない、見たこともない。
嬉しそうとも、苦しそうとも、楽しそうとも、悲しそうとも、色々な感情が混ざり合って、きっとそのどれでもなくて、俺にはわからない感情。
怖い。凄く。知らない蒼志が。
それと同時に、嫌悪じゃない、何かがぶわっと湧いてきて。
思わず腰を抜かした。
…とてもかっこ悪いことに、すとん、と。
「わ、え、司センパイ!?」
「え、え、大丈夫すか!?」
隣に居た後輩が心配してくれていたけど、俺は蒼志から目が離せなくて、ああこれがカリスマ性だとか、惹きつける力だとか、そういうものだと理解した。
いつの間にか終わってしまった喧嘩。
ほっとして、でも残念だと一瞬でも思ってしまった自分を、殴り飛ばしたかった。
何があったか知らないし、いくら他人と言えど怪我しているひともいるのに、何てことを。
ぐるぐる変な気持ちが渦巻いて、呆然と前を見続けた。
「蒼志さーん!」
ひとりが、一息ついていた蒼志に声をかけた。
煩わしそうにしながら、振り返る。
目が、合った。
「つかさ…?」
喧嘩の時とは全然違う顔に、思わず笑ってしまった。
← top →