「蒼志さんに話しかけんなよ」
「近付くな」
「何の取り柄もなさそうな癖に」
「いい加減にしろよ」
「お前なんかが」
とか、言われるのかと思ってたけど、そんなこと杞憂だった。
「え、え、じゃああの美味そうな弁当、司センパイ作ってんですか?」
「一応、あ、でも桜も手伝ってくれてるよ」
「桜ちゃん良い子っすね!良いお嫁さんになれますよー!」
「まだ嫁に出さない!」
「はは、司センパイほんと桜ちゃん好きなんですね!」
いや、なんていうかさ、……敵意がなくて、多分この人たちも蒼志とか緒方とかと同じで、害のない、身内?に近くなったらものすごくフレンドリーになるというか、ものすごく話しやすい。
最初は何で蒼志とあんなに仲良くなれたのか、とかそういう話だったんだけど、気付いたら俺は桜の自慢ばっかりしてて、しかもそれにのってくれちゃうからついついいろんなことを語ってしまった。
「あ」
「ん?」
「俺もだ」
「おれも」
どれだけ経ったろう。
もしかしたら一時間くらい喋っていたのかもしれない。それくらいの時に、一斉に皆携帯が鳴った。
俺を除いて。
……別に寂しいとかそんなこと思ってない。ちょっと仲間外れ感はあるけど。
「…あ、この近くじゃね」
「行く?」
「でも司センパイいるし…」
「センパイ連れてけばいいんじゃね?」
「センパイも行きます?」
「行きましょ、すげーもん見れますよ!」
「え?…あ、うん?」
全くよくわかっていないうちに、どうやらその凄いものを見に行くことになったらしい。
本当によくわからないし、俺完全部外者だけどいいのかな…。
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