side 蒼志
「……寂しいなぁ、と、思って」
そう言われて、ぐ、と心臓を掴まれた気がした。
腕で隠されたこいつの目が、何を考えているのかわからなくて。
衝動的に、唇を重ねた。
それからすぐに離して、我に返って、……何、を、してるんだ、俺は。
何故。そんなことをしたのか。
自分でも疑問に思う。
ただ、司の雰囲気に飲まれてしまっただけなのか。
それとも、違うのか。
「…………寝るか」
司の、こいつ自身の現実逃避と、恐らく俺への気遣いに、大人しく乗ることにした。
「……………そうだな」
頷きながら電気を消そうとして、気付く。
いつも、寝ていた場所に。
「…蒼志?」
いつまでもそのまま考えている俺を不思議に思ったのか、司はごそりと身体を動かし、こちらを見上げた。
その隣は、ちゃんと一人分、スペースが空いている。
普段なら何も思わなかっただろう。
「寝ないの」
「……いや、…」
一切の下心無しだと思ってる司は、隣で寝ることに、今までと変わりはないかもしれない。
でも、もしかしたら、少なくとも、そう言う気持ちがあると、気付いてしまった俺には。
「早く、電気」
「……」
……と言っても他に寝るところを考えるのも面倒だ。それに態度を急に変えるのも変な話だし、深く考えるのはやめた。
ベッドに入ると相変わらず狭くて、どうしたって距離が近くなる。
ちょっとした気まずさからお互い背中を向けて。
「おやすみ」
「…おう」
そうして、いつの間にか俺たちは眠りについた。
…朝起きると、毎度の如く、だった訳だが、司曰く、いつもと違って正面から抱き締めていたとか。
俺も随分、簡単な人間だったらしい。
08.目覚め
(蒼志?)
(………少しは危機感とか持てよ、お前…)
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