「今日さ、進路用紙、配られたよ」
俺の部屋で寛いでる蒼志に、まだ何も書いていない白い紙を見せた。
「あー…そんな時期か」
興味無さそうに欠伸。
……余裕だなぁ。
「司、どうするか決めてんのか」
「何と無くだけで、色々迷ってるよ」
紙を机の上に置いて、ぼすん、とベッドに横たわった。
何が最善かはわからない。
「保育士にさ、なりたいんだ」
桜とずっと一緒に居て、それはあの子の影響かもしれないけど。
高校入ったくらいから、漠然とだけど、なりたいな、と思って。
「専門だと父さんにかける負担も少ないし、…でも大学行って、もっと色々見解増やしたい、とも思うし」
きっと父さんは、お金のことなんて心配するなと言うだろう。
でも俺は、そこを決断するだけの度胸があるのか。
「悩んでる」
「……お前、真面目だよな」
「ただ弱腰ってだけ」
緩く笑うと、蒼志が俺の顔を覗き混んできた。
手を俺の身体の横に付いていて、結構な至近距離だ。
「蒼志は?」
「あー…」
「決まってんの?」
「……建築、とは思ってる」
建築。
意外、と言えば意外、かもしれない。
「まだ、俺もわかんねぇけど」
「そっか」
建築、かぁ…。
当たり前だけど、蒼志は理系で、俺は文系だ。同じ学校に行く可能性は低い。
つまり、今みたいに一緒にいれることが少なくなる。
そう思ったらちょっと心臓が痛んだ。
当然のことなのに。
「司?」
「……いや、」
「何」
「……寂しいなぁ、と、思って」
蒼志の顔が見れなくて、腕で顔を覆う。
何言ってるんだろう、俺。
「あお、」
忘れてくれ、と開いた唇は、何故か、温かい何かに、塞がれた。
………え?
07.それぞれの
(なに、え、なんだ、)
(なんなんだ、いまの)
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