うちの周りに似合わないバイクの、そのエンジンの止まる音がして、蒼志が帰ってきたことに気付く。
桜は案の定寝てしまっていて、インターホンが鳴って彼女を起こしてしまう前に、玄関の扉を開ける。
「おかえり」
丁度ヘルメットを外して軽く頭を振った蒼志に声を掛けた。
「……ただいま」
何だかいつもより穏やかに笑う蒼志が珍しくて、…それと、門灯に照らされて雰囲気が違う気がして、少しだけどきっとしたのは内緒だ。
「緋里くん、何か言ってた?」
「今度一緒に連れて来る」
「へー…良かったね」
「何が」
「ん?ちょっと、わだかまりも取れたんじゃないの」
最初に蒼志と会った時に、緋里くんのことを子供らしくないと言っていた。
俺も随分大人びてるとは思ったけど、実際会話してみるとそんなこともなくて。
何と無く、蒼志もそれがわかったんじゃないだろうか。
憶測、だったけど、この様子だとあたりのようだ。
「……お前さ」
「んー?」
「………何でもねぇよ」
「うわ、」
後ろからがしがしと頭を揺さぶられた。
これは大分照れてるな。
「………ありがとな」
玄関を開いた時に小さくそう聞こえたから、お返しにちょっと背伸びをして頭を撫でてやったら、簡単に振り払われてしまった。
照れてやーんの。
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