「よ」
よ、じゃない。
「……シャワー浴びて来い」
それから程なくしてインターホンを鳴らして表れた蒼志は、何故か全身汚れていた。
「なんでそんな汚れてんの」
「あー…避けたらそのまますっ転んだ」
「…怪我は?」
「ない」
「それは何より」
蒼志の置いてった服を引っ張り出して、洗面所のところにタオル含め準備しながら、扉越しにそう話した。
またどこかで喧嘩していたようだ。
指の節の皮が少しだけ擦れていた、気がする。
喧嘩すんな、とは言わない。
怪我しないでほしい、と注文をつけてから、確かにあんまり怪我をしてこなくなったし。
俺は、約束を守ってくれれば、十分だから。
「あ、緋里くん来てるよ」
「…はあ?」
「緋里くん、鍵忘れたんだって」
「……先に言えよ」
「服とか置いといたから、着替えたらリビングな」
「はいはい」
詳しい話は後で良いだろう。
シャワーだからそんな時間かからないと思うし、緋里くんには申し訳ないけど少しだけ待って貰おう。
あ、今日蒼志夕飯食べていくよな。
…緋里くんだけ返すのもあれだし、ご両親の帰る時間が遅いなら、うちで一緒に作るか。
← top →