「あっちゃん、またきてね」
「気が向いたらな」
不良から頭を撫でられる桜の寂しそうなこと…!
だ、駄目だ、大人になるんだ俺!邪魔したら桜に嫌われるぞ俺!
「じゃあ、邪魔したな」
「いえ、怪我、気をつけてください」
「慣れてる」
「慣れてもいいことなんて無いんですから」
「わかってるよ」
苦笑を浮かべた不良は、手を軽く振って家から先の外へ、出て行った。
もうこの先、滅多に会うことはないだろう。
だって俺たちとは、もう何の関わりもないんだから。
住宅街を抜ければ、あっという間に、大きな通りに入る。大きな町だから、不良だって多い。
俺が通ってる高校もそんなに偏差値も高くないから普通に素行の悪い生徒も沢山居て。あの人、何だかんだで目立ちそうだから、きっと知ってる奴らも少なくないと思う。
でも、聞く気にはなれない。
あの人が、そういう人だから。
もしまた会うとしたら、ひょっこり現れたりするに違いない。
「つーちゃんつーちゃん」
「ん?」
「きょうのごはんなーに?」
「今日はハンバークにしよっか」
「やったあ!」
繰り返しの毎日。当たり障りのない毎日。
それにちょっと突発的な出来事があったのが、昨日。
これからも、毎日が続いていく。
と、俺は純粋に信じてた。
「あ!」
「よう」
「…あの、髪の毛と同化してますよ」
「悪い、手当てしてくんね?」
「………桜、玄関あけてきて」
「うんっ」
頭から赤い血を垂らしてる不良に、お前は本当に怪我に慣れてるんだな、と言ってやりたい。
「あっちゃん、いらっしゃい!きょうはおとまりね!」
……ちょっと嬉しそうな桜に免じて、今日くらい、まあ手当てしてやらんこともない。
平和な毎日は、この不良によって、ちょっとずつ変わっていく気がしてならない。
01.初めまして
(ご近所さんに何て思われてんだろ…)
(ま、桜が喜んでるならいいか)
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