「こんにちは」
「あ、」
少し距離のある場所から声を掛けると、彼もこちらに気付いたようでこちらを振り向いた。
……随分美少年、というか、完全に負けてる気がする。
「どうしたの?」
「……」
その少年は何故かこちらをじっと見ていて、反応がなかった。
そんなに怪しかったかな…。
「……」
「……」
じっと無言で俺と桜を眺めること数十秒。
少年はこちらに向かって歩いてきて、俺達の前で立ち止り、口を開いた。
「つかぬ事をお伺いしますが」
「え、あ、はい」
そして小学生とは到底思えない口調で、俺を見上げた。
「司さんと桜さんですか」
………え。
あれ、何で俺の、あと桜の名前まで知ってるんだろう。
どうやら様子からすると名前だけしか知らないようだが、どこで知ったのか、脳内が混乱する。
どっかで情報が流れてる?いやでもこんな小学生に?
もしかしたら俺たちの知らない親戚?
疑問が湧き上がる。
まあそんなの気にしないのが、うちの天使なんだけど。
「うん、さくらだよ!」
「本当ですか」
「つーちゃんはつーちゃんなの」
「それは良かったです」
「どうしたの?」
「はい、あなた方のお宅…お家を訪ねようと思っていて」
「おうち?」
「はい」
「じゃあいっしょにいこー?」
「いいんですか?」
「うん!」
と、俺がぐるぐる考えてる間にいつのにか桜が話をつけていて、何というか、相変わらずマイペースだ。
そこも可愛いけどね!
「よろしいですか、司さん」
「ああ、うん、…とりあえず家で話そうか」
ありがとうございます、と頭を下げる彼は、やっぱりランドセルが不釣り合いな気がした。
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