「あら、司くん」
「こんにちは」
「今日はあのかっこいいお友達は一緒じゃないの?」
「ああ、はい、今日はいないんです」
「そうなのー…」
桜の迎えに幼稚園に行くと、先生がちょっとそわそわしていて、俺がそう返すととちょっと残念そうだった。
……蒼志くんは年上のお姉さんにも相変わらず人気があるようで。
モテる男は違うね。
え、いや、別に羨ましいとか思ってないし。
桜がいればいいし?
「桜ちゃーん、お迎えよー」
「はーいっ」
「桜、帰るよ」
「うん!」
ありがとうございました、頭を下げて言えば桜も真似して、手を振りながら、幼稚園から出る。
今日はどんな歌を歌ったとか、こんな遊びをしただとか。
いつものように手を繋いで、一生懸命喋る桜の話を聞いた。
そういえば、蒼志は今日くるんだろうか。
そうしたら進路用紙のことを言った方がいいかな。
「つーちゃん」
「なーに、桜」
「まいご?」
「え?」
そう桜が指した先は、町内掲示板に書かれている地図を凝視して周りをキョロキョロしている、ランドセルを背負った男の子だった。
どうしたんだろう。
誰か友達の家に行く途中で迷ったのかな。
「まいご?」
「聞いてみようか、ね」
「ね!」
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