夏休みに入る数日前に、プリントが渡された。
進路用紙。
第一志望校、第二、第三。
そう枠に書かれた、白紙。
夏休み明けに提出しろ、とのことらしい。
蒼志がいないその日の昼休み、俺は何故か春日野に誘われ一緒に中庭で昼食を取っていた。
周りがカップルとか女子ばっかりなので場違い感がすごいが、どうやら春日野は気にならないようだ。
「春日野はもう決まってんの」
「何が?」
「進路」
日差しは暑いが、日陰は風が吹くとまだ涼しい。
「ああ、国立かな、第一は」
「国立」
「設備が良いし、やりたいことやれるから」
「そっか」
「入るの凄い大変だけど」
この間のテストについて、親と話したら、次も頑張ってね、と、いつもと変わらない様子だったと彼に聞いた。
佐藤の言った通り、全然怒られたりしなかった。
そう笑った春日野はどこか吹っ切れていて、次は蒼志に負けないと決意している。
「佐藤は?」
「俺?」
「どうするの?」
「どうしようか、考え中」
やりたいことは、何となくある。
でもそれで、いいのか、本当に自分が納得しているのか。
「家族とも話合いたいし」
「そっか」
将来の、選択。
就職、専門学校、通信制の大学、短期大学、四年制大学。
俺達には、沢山の選択があった。
大学の場合、今の成績なら指定校や推薦で入れる可能性があるから、塾や予備校に行くつもりはない。
奨学金とか使えば、父さんにかける負担も少なくてすむ。
だけど、まだ踏み切れない。
あー、考えることだらけだ。
「そうだ、佐藤」
「んー?」
「夏休みさ、どっか遊びに行こう」
「桜も一緒で良い?」
「もちろん」
来年は忙しくなる。
だから今年は目一杯遊ぼう。
みんなと、家族と、沢山。
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