謝って屋上を出て行った春日野の背中を眺める蒼志の目が、何となくむすっと拗ねてるような感じがして、首を傾げた。
「蒼志?」
「……何だよ」
「いや、…その、ごめん?」
「何謝ってんだ」
わかんないけど、…あれかな、春日野殴ったときに、蒼志のことちょっとムカつくって言ったからか。
……でもそのくらいでこいつが怒るとか、ましてや拗ねるとは思えないし。
「えーと、……今度弁当に蒼志の好きなものばっかりいれるからさ、…」
「ぶふ…っ」
おいこら緒方、何笑ってんだ。
そりゃ子供騙しかもしれないけど、俺にできることって言ったらそれくらいしかないんだからな。
「許してあげたら、あっくん」
「……別に怒ってねぇよ」
ぐしゃりと潰されたパンが入ってた袋を、蒼志は緒方に投げつけた。
……あ、そういえば。
「昼、食べんの忘れてた」
今何時かはわからないが、教室に戻っても食べる時間はない気がする。
仕方ない、晩飯に回すか。
「司」
「ん?」
「飯どうすんだ」
「抜きだなー」
「これ」
渡されたのは、惣菜パン。
食べれなくなった弁当の代わりに買ったものらしい。
でも貰ったら蒼志の分がさらになくなる。
「で、弁当食わないならお前の貰う」
「は?」
「午後サボるし」
授業があるから俺は弁当食べてる暇がないから、今ここでこの惣菜パンを食べる。
蒼志は、俺から俺の弁当を受け取って授業を気にせず食べる、と。
そういうこと。
「いや別にいいけど」
「お前の教室から弁当とってくる」
「え、」
何で急にそんな行動的に、……まあ機嫌治ったみたいだから、いいのかな。
「すっかり胃袋掴んでんね、司ちゃん」
それより、俺がいないあの教室に蒼志が入ってったらどうなるんだろうか。
そんなことを思いながら、パンを囓った。
06.何が一番?
(カツアゲみたいに見られんのかなー)
(え、お弁当箱で?)
← top