side 蒼志
「あっくん、顔凶悪だよ」
「うるせぇ」
床にぶちまけられた弁当は食えないから、ある程度片付けて、陸が買ってきた購買のパンをかじった。
不味くはない。
でも俺が食べる予定だったものと全然違う。
「……司ちゃんさぁ」
「…何だよ」
「男前だよね」
「……止めたくせに、自分から殴りにいったからな」
「惚れそうになったわー」
あれは凄かった。
俺も殴るつもりだったが、あんな不意打ちで叩くのは、流石に効いただろう。
「しかもさ、アフターケアまでばっちり」
そう、それだ。
それが面白くない。
向こう側で、ふたりで話してる姿が苛つく。
散々喚いた挙げ句、ぴーぴー泣き始めて、ガキかっての。
「……ああ、ガキだからか」
「なにがー?」
桜への、子供への接し方に近いのかもしれない。
妙に納得した。
「ヤキモチ、妬いてる?」
「はあ?」
「司ちゃんとられちゃって」
……ガキじゃあるまいし。
あそこにいる奴と一緒にするな。
「ちょっと悔しいんでしょ」
「知るかよ」
「素直じゃないねー」
「違うっつの」
「司ちゃんがくる前にその顔、なおした方がいいよ」
そう言って陸が手で司の方を指すと、ふたりが丁度立ち上がったところだった。
さっきの奴はすっきりした様に笑っていて、司も、そいつに話しかけていて。
……くそ、面白くねぇ。
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