「………頑張ってきたんだ」
「うん」
「それなのに、あっさり、抜かされた」
「うん」
「学校も、ろくに出てなかった奴に」
屋上の隅っこ。
春日野とふたり並んで座って、ぽつりぽつり、零れた言葉に頷く。
ごめん、と俺が謝った後、春日野は急に泣き出した。
そんなに痛かったかとあたふたしてたら、ぐっと手首を掴まれて、ごめん、と謝ってくれた。
多分、このひとも、自分でもわかってて。
不満そうな蒼志と緒方を置いて、端っこに連れて行き、今に至る。
子供みたいに、言い訳して、後悔して。
自分が一番だったのに、ずっと一番だったのに。
皆からも期待されて、親からも期待されて、一番じゃないと、駄目なのに。
一番じゃなくて良い、駄目じゃない。
そんな安易な言葉はかけらなかった。
ただ、うん、うん、と頷いて、空を眺める。
高校生なのに、高校生だから、子供と大人が入り混じった感情。
吐けるところもないから、蒼志に八つ当たりした。
苦しかった。少しでも、楽になりたかった。
「……親に、二番だったって、言いたくない」
「大丈夫だって」
「怒られる」
「怒られんの?」
「……たぶん」
「俺、十八位だけど、親に自慢するよ」
「……」
「点数、上がったんだ」
「……」
「一番下でも、点数上がったって、言うと思う」
「……怒られても?」
「怒られても」
実際、一番下だったら、隠すかもしれないけど。
でも勉強して、点数上がったら、自慢したいし。
「佐藤」
「ん?」
「ありがとう」
「どういたしまして」
すっきりした顔の春日野は、目も鼻も頬も、真っ赤だった。
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