「………司」
「……佐、藤…?」
はい、佐藤司ですが。
「………何でいんだよ」
「蒼志、手離したげて」
「あ?」
うわ怖…!
ほんと怖い。マジ怖い。
蛇に睨まれたうんたら、って感じ。
ビビりながらも蒼志を見続けると、少しは落ち着いたのか舌打ちして春日野から離れた。
「っげほ、ごほ…!」
「春日野、深呼吸」
噎せる春日野の背中を軽くさすってやると、段々と息が整ってくる。
でも蒼志くん、こっち睨むな、やっぱり怖いから。
……さて、と。
「落ち着いた?」
「……ああ、ありが、」
とう、と言われる前に。
全力で春日野の頬を平手打ちした。
「い…ッ!?」
…結構手痛いな。
「つ、かさ?」
「え、え、司ちゃん、何してんの!?」
うるさい外野。
痺れる手はほっといて、頬を抑える春日野に対峙する。
「……そりゃ、蒼志はムカつくだろうさ、こんな不良が一番とってくなんて、俺もいらっとしたし」
「おい司」
「蒼志は黙ってろ」
「……」
「ただ、こいつだって頑張ったところを俺は知ってるし、ものに当たっても意味ないし、何より俺が朝早く起きて作った弁当をこんな風にされるのは気に食わない」
散らばったうちの一部は、桜と一緒に作ったり、父さんに誉めてもらったものだ。
それを理不尽な行動で滅茶苦茶にされるのは、嫌だ。
「……でも俺も殴ってごめん」
暴力沙汰は駄目だ、と言ってたくせに、自分も手が出た。
弁当を滅茶苦茶にされたことは謝りたくないけど、全力で殴ったのは申し訳ない。
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