その日返却されたテストは軒並み点数が上がっていて、父さんに報告するのも楽しみになってきた。
数学の点数なんかは前回より十点以上高くて、もう蒼志様々である。
「司ちゃん!」
「………緒方?」
そんな風に思いながら昼休み、クラスのやつらと食べようと弁当を広げた時、教室に大分焦った様子の緒方が飛び込んできた。
「ちょっと来て!」
「は?」
「いいから!」
何が何だか、説明して欲しい。
早く早く、と腕を引っ張られて、縺れ込みそうになりながら、ちょっと、もう少しゆっくりにしてくれ。
あんたと足の長さが違うんだ、スピード抑えろ!
そんな願いも構わず、ほぼ全力疾走する中連れてこられたのは、いつぞや青春劇場を繰り広げた、まあ屋上である。
「なに、」
「だから納得いかないんだよ!」
そして聞こえてきたのは、知っている声。
でもこんな荒げた声は、聞いたことがない。
「え、あれって」
「司ちゃん、知ってる?」
「知ってるも何も」
銀狼、…蒼志とは違う方向で有名な人物だ。
「春日野…?」
春日野 正彦。
品行方正、とまでは言わなくても、誰にでも分け隔て無く接し、明るく、スポーツも万能。
教師にも生徒にも人目置かれ、何より頭が良、…………あ。
「…そういうことか」
「俺ぜんぜんわかんないんだけど、急に怒鳴り込んできて、あっくんに喧嘩売り始めてさ」
それは、仕方ないことかもしれない。
けれど、疑問があって。
「俺が呼ばれた理由は?」
問いかければ、金髪はきょとんとして、言った。
「だって司ちゃんだし」
やっぱり緒方は頭良くないんだな、と思いました。
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