卵粥を食べ終わった不良は、律儀にも礼を言って土鍋を片付けようとしてくれた。
一応どんな理由であろうと怪我人は怪我人なので、座ったままでいてもらって俺がさっさか片付けて差し上げる。
マイエンジェル桜も手伝ってくれようとしたが、何だかそわそわとしてたから不良の相手をしてくれるよう頼んだ。
…お兄ちゃんは大人だ、例えどんな相手だろうと、とりあえずは中身を知ってから君たちの交際を考えてやろう。
ま、どんな奴でも桜を嫁にやるつもりは無いがな!
「ただいまー」
「あ、ぱぱだ!」
「桜、出迎え行ってあげて」
「はーいっ」
おや、もうこんな時間か。
玄関から聞こえる声に、父親が帰ってきたのを知った。
リビングを飛び出して家族を迎えに行く桜、マジ天使。
すると、今まで桜と遊んでた不良はこちらを向いて、悪い、と急に謝った。
「帰るわ、長居しすぎて悪かった」
「あ、そういう…いや、別にいいですよ、うちの父親、桜とそっくりなんで」
「は?」
リビングの扉が丁度開けば、嬉しそうな桜に手を引かれ、入ってくるスーツ姿の父親。
一瞬身構えたのか少し不良の赤い髪が揺れて、でもそんなことお構い無しにうちの父親は桜と似た笑みを浮かべた。
「司、友達かい?」
「あー、まあ似たようなかんじ」
「随分男前な子だねぇ」
「あっちゃんていうの!」
「そうか、あっちゃんかー。うちの子達をよろしくね、あっちゃん」
「……」
桜が言う分には良いけど、年頃の男にいくら何でもあっちゃんは無いと思うんだ、父さん…。
「泊まっていくかい?」
「いや、あー、そろそろ帰るんで、すんません」
「えー、あっちゃんかえっちゃうのー…?」
「桜、あっちゃんにも大事な用事があるんだよ。また、おいでね」
よく理解しないまま会話を続ける不良を尻目に、取ってきておいたハンガーを父親に渡す。
申し訳ないが、うちの父と妹は凄いマイペースなんだ。
母が多分、一番しっかりしてたんだと思う。
11歳までの俺は、そんな感情抱くことはなかったけど。
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