「うわ…」
「……すげぇ混んでるな」
到着した電車は、休日だと言うのに満員だった。
どうやらどこか違う路線のトラブルで振替輸送をしているとか。
何で今日に限って。ついてない。
「司、ここ居ろ」
「え、」
電車に無理矢理乗り込んで、ぎゅうぎゅうにされるかと思いきや、腕を引かれて扉と席の角のところに押し込まれた。
俺が寄りかかるところは出来たけど、桜が。
そう言おうとする前に、蒼志が片手でガードするみたいに扉に手付いて、何だか守られてるような格好になった。
…これってあれだろ、カップルとかがやってるあれだろ。
何でナチュラルに出来るんだこいつ…!
「……きつくね?それ」
「桜が潰されるよりいいだろ」
「そりゃ勿論」
そうではあるけども。
結構、顔が近、…いや、考えないようにしよう。
「……何顔反らしてんだよ」
「………別に?」
下に向けていた目線を上げると、覗き込むようにこっちを見る蒼志の目が、さっきより近くにあった。
「………ちかい」
「………意識してんじゃねぇよ」
仕方ないだろ、綺麗な顔がこんな近くにあったら男でもどぎまぎするわ。
「……蒼志、今日晩御飯何が良い?」
「あー…いや、今日は別のとこ行くから」
「へ?」
「いい加減顔出せってうるせぇんだよ」
話題を反らそうと今日の晩御飯の話をしたら、意外な答えが返ってきた。
多分、顔出せ、と言っているのは蒼志と普段学校でもつるんでる人達の集まりみたいなものだろう。
もしかしたら、というか絶対、その中には緒方もいる。
そういえば、ここのところ、テスト期間とは言えずっと俺達と居たもんなぁ。
悪いことしたかな。
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