「はい、あっちゃん!」
「ありがとな」
出来た!と輝く瞳で白い冠を掲げ、何故か俺と一緒になってシロツメクサに格闘していた不良の頭に、ふわりとそれを乗せた。
え?別に羨ましいとか、全然、そんなこと思ってなごめんなさい嘘です死ぬ程羨ましい。
「つーちゃんはこれね!」
「え?」
ぎりぎりと蒼志を睨んでいたら、そっと、桜の小さな手が、俺の手を持ち上げた。
それから、中指に、白色の指輪。
「え、さくら、」
「さくら、おおきくなったらつーちゃんとけっこんするの!」
…あ、どうしよう、嬉しさで発狂しそうなのが一周回って逆に冷静になった。
天使が天使で今日も天使は天使だった。
「…ッ!…、っ、」
「つーちゃん?」
「…嬉しすぎて声出ないんじゃねぇか、多分」
正にその通り、よくわかったね蒼志くん。
俺は今万物に感謝していたところだよ。
もう声も上手く出ないから、きょとんとしてる桜をぎゅっと抱き締めた。
ありがとう、嬉しい、言葉だけじゃ足りないほんわりしたものが胸を占めて、つん、と目の奥が痛くなる。
「泣いてんのかよ」
「まだ泣いてない、辛うじて」
「つーちゃんだいじょうぶ?」
「うん、桜、ありがとう」
額を合わせて、目を見ると、幼い頃見た母の瞳に似ていた。
「やっぱ、兄妹だな」
「へ?」
蒼志の両手が俺達ふたりの頭をわしゃわしゃと掻き混ぜ、そのまま頬をぶに、と摘んだ。
「笑った顔、親父さんにそっくりだ」
あっそ。
そんなことより手離せよ。
……なんて、正直嬉しい、単純に、ちくしょ、また泣きそうだ。
「蒼志」
「あー?」
「…さんきゅ」
「別に」
また髪に一度触れてから、蒼志はそっぽ向いて再び冠作りを始めた。
ほんと、出来る人間だよなぁ、こいつ。
桜を膝の上に乗せて、あっちゃんかっこいいね、と呟くと、桜も、ねー、と笑顔で頷く。
それからまたふたりで格闘して、幼稚園児よりあんまり綺麗に作れてないんじゃないか、っていう冠がやっと完成した。
二重になった冠は桜には大きくて、歪な首飾りになってしまった。
だけど天使がまた笑うから、自然と俺達も頬が緩む。
冠と首飾りと指輪。
そうだ、父さんには腕輪を作ってあげようか。
← top →