…すごいなぁ、と、思う。
「あっちゃん、あっちがいい!」
「あんま走るなって」
そりゃあさ、イケメンが可愛い天使と遊んでたら自然に目がいくのがわかるけど。
お母様方はともかく、小さい女の子達も、みーんな羨ましそうにしてるってどういうこと。
そしてそれを見守っている俺は現在荷物番、という程ではないんだけど、ちょっと桜ペースにはしゃいだり桜見てはしゃいだりしてたら疲れたので、蒼志に面倒を見てもらって、自分は寛いでいた。
麦茶が美味い。
もう、夏だ。
でもここは木陰だし、風も通って涼しい。
ぱたん、とシートに寝転がると、葉の隙間から光が覗く。
眩しい。
「つーちゃん?」
「何寝てんだ」
「あれ」
視界いっぱいに、桜と蒼志が居た。
上半身を起こすと、髪の毛から落ち葉が落ちる。
…え、今寝てたの、俺。
「おひるだよー」
「もうそんな時間かぁ」
くあ、と欠伸が漏れて、桜の頭を撫でる。
にこにこと笑って嬉しそうだ。うん、俺も嬉しい。
「手、一応洗わせたから」
「あんがと」
何この出来るイケメン。
持参したお手拭を蒼志と桜に念のため渡しつつ、さっき寝転がる前に洗っておいた自分も手を拭いて、重箱に手を伸ばした。
ぱかり、蓋を開ければバランスをある程度考え、桜の好みをつめた色とりどりのおかず。我ながら結構完璧。
勿論桜が詰めたプチトマトも重箱の一角を担っている。
「せーの」
「「いただきまーす」」
「いただきます」
最近、蒼志はうちの挨拶が日常になったのか、割と平気で言うようになった。
最初のうちは戸惑ってたのに。慣れってすごい。
挨拶できる不良ってきっとモテるぞ。
…いや、こいつ無愛想でも何でもモテてたわ。
「あ」
「ん?」
卵焼きを食べた蒼志が一瞬眉を寄せた。
え、だしの味苦手だった?
「…この味好み」
「びっくりした、苦手かと思った」
そういえば蒼志に卵焼き作ったことなかったっけか。
夕飯にはあんま作らないし、お弁当にも時々しか入れないし。
気に入ってもらったなら何よりだけど。
「さくらあまいのもすきだよ!」
「じゃあ今度は甘いのも作るね」
「おやくそくよー」
桜のためならお兄ちゃん何味だって作ってやるよ!
← top →