桜に十分な水分補給をさせてから、天使たってのご希望で、右手を俺、左手を蒼志が繋いで、少しだけある遊具のところまで歩いていく。
「さくらぴょーんてやりたい!ぴょーんって!」
爛々と輝いた目を向けられて、父と一緒に慣れている俺は頷く。
が、蒼志は知らないというか知っているはずがないから、きょとんとした目で俺に助けを求めていた。
「ぴょーん?」
「ぶっ」
あの蒼志がぴょーんって言った…!
あの不良の蒼志くんが。カリスマ蒼志くんが。
ぴょーんって首傾げながら言うって、噴出すのは仕方ないことだと思う。許せ。
「…何笑ってんだ」
「ごめんごめん」
「で?」
「ああ、桜がジャンプしたときに、俺達で持ち上げてやるの」
身体がふわっと高く浮くのが桜のお気に入りらしい。
「せーのでぴょーん、な」
「おー、わかった」
「せーのっ、」
「「ぴょーん!」」
桜の掛け声に一緒になって俺が声を出して言うと、蒼志が顔を逸らした。
…おい、何笑ってんだ、肩揺れてますけど。
「いや、お前が良い顔で言うから」
だって父さんと桜と俺でやる時は皆でいっせいに言うんだ、そっちの方が楽しいって父さんが言うから。
最初は恥ずかしいとかちょっとは思ったけど、父さんと桜が喜ぶなら俺は構わないね!
睨みつけてやったらまたけらけら笑ってやがる。
反論しようと口を開きかけたとき。
「もっとたかくー!」
繋いでいた手をぐっと引かれて、お互いに桜見下ろす。
どうやら彼女が納得できる高さじゃなかったようだ。
…あーあ、何やってたんだろ、俺ら。
馬鹿やってた気分になって蒼志を見たら、奴も同じことを思っていたらしく。
「せーのっ」
お姫様に満足して頂けるように、さっきよりずっと笑って、高く持ち上げた。
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