「……どこだ、ここ」
「あっ!」
「………何で子供…?」
「つーちゃん!がいじんさん…あれ、ちがうっけ?…いいや、がいじんさんがおきたよ!」
「つーちゃん?…そもそもお前誰だ?」
「さくらはさくら、つーちゃんはつーちゃん!」
「さっぱりわかんねぇ」
「ねえねえ、おなまえは?」
「あー…俺はアオシな」
「じゃあ、あっちゃんねー」
「いや…まあいいか」
「あ、目、覚めましたか」
「…あんた誰だ」
「つーちゃん!」
「あんたがつーちゃんか」
「はあ、俺がつーちゃんですが」
家の目の前でぶっ倒れていた不良を、どうするか悩んでいると、桜が彼の腕を引っ張って中に入れようとしていた。
どうやら怪我をしているのが分かったようで、涙目になりながら「死んじゃう!」とか叫んでいた。
見ず知らずの人間、しかもどちらかというと恐らく自業自得なひとを助けようとするとかマジ天使だろ、と思った。
あと同時に見てみぬ振りをしようとした自分に嫌気がした。
恐らく自分より10センチ大きい人物を無理やり背負って、無理やりリビングのソファーに寝かせ、出来うる範囲の手当てと着替えをさせたら、俺の体力は全然残ってやしなかった。
だがどうだろうか。
妹の、「つーちゃんありがとう!」の可愛らしい笑顔に疲れは吹っ飛び、何もかも満たされた。
マジ天使。
不良がいつ起きるかわからない。
ずっと見張っているわけにもいかないので、今夜の晩飯作って待ってようと思い、一応父、俺、桜分のおかずと、ついでに不良さんのお粥を作っておいた。桜もきっとこうしたら喜んでくれるだろうと思って。
「卵粥食えます?」
「…食える」
「熱いんで気をつけてくださいね」
「…おう」
「あのね、つーちゃんのたまごのおかゆ、おいしいんだよ!」
「桜、危ないから静かにしてなさい」
「はーい」
桜は可愛いが、目が覚めたばっかりで、その上一応けが人の前で走り回ったりされたら少し気が滅入るひともいるかもしれない。それにお粥を入れてる土鍋は熱い。ひっくり返したら大変なことになる。
遠ざけようとすれば、不良さんはれんげを咥えたまま、桜の頭に大きな手を置いて、ぽすぽすと上下させた。
…よくよく考えればこの不良、顔もスタイルも良いな。
ほら、桜がちょっと頬赤らめてんじゃねぇか。むかつく。おいこら。桜は俺の妹だぞ。
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