何作るかなー…今日ピーマン安いしな…ピーマンの肉詰め?でもこの間蒼志居る時にハンバーグ作ったし、…。
「んー…何かピーマン使った料理ない?」
「ピーマンの肉詰め」
「以外で」
「あー?……あれだ、青椒肉絲」
「それだ」
辛くしなければ桜も食べれるし、弁当のおかずにもなるし。
「豚肉で良い?」
「ああ」
牛より豚の方が安いから、家計を任される身としてはちょっとでも浮いたら嬉しい。
あと牛で作ったこと無いから失敗したくないということもある。
美味しくないものを桜に食べさせるなんて、有り得ない事だ。
豚肉も買って、後ピーマンとか諸々の野菜類も買って、よし、夕食の分は大丈夫。
さて。
「他に買いたい物ある?」
「駄菓子」
「………え、」
「桜にだよ」
ああ、びっくりした。
でも確かに、逆に大人が買う沢山詰まったお菓子よりも、小さい子供にとったら駄菓子のような、小さく個別に分けられているものの方が喜ぶのかもしれない。
ただ制服着た男子高校生二人(うち一人は赤い髪のイケメンな不良)が駄菓子コーナーで真剣に選んでるのは、ちょっと異様な光景だってことは、認めよう。
だって明らかに子供が逃げてくし…怖いよな、わかるよ、うん。
「司」
「んー?」
「先会計済ましてろ、すぐ行くから」
駄菓子選びは終わって、その選んだ分は彼が払うと言う。高々三百円程度だし、気にしなくて良いって言ったんだけど、奴は譲ろうとしなかった。
別々の会計にするって言ってもレジまでは、と思ったらそれすら別にしやがった。気にするってレベルじゃねーよこれ。
何か隠してる気がする。しかもあの顔からしてしょーもないことを。
「蒸し暑…」
荷物を持ってスーパーを出れば、一気にむわっと湿気が纏わり付いた。
空は暗くなり始めている癖に、梅雨独特の暑さを帯びている。
「わり、待たせた」
「あ」
ひょっと軽くなった片手に荷物がない。変わりに横にいる奴が荷物を持っていた。
しかも重い方。何だこいつイケメンか。
「いいのに」
「いいから」
がさがさ、自分で買ったっぽい袋を漁って、蒼志は青いアイスの袋を取り出し、歯で袋を切って、中からアイスバーを取り出した。
さっき言ってた待て、ってアイス買うためか。言えよ。
「ほら」
「む」
…冷たい。
「ひゅふひひゃへほ」
「は、何言ってんのかわかんねーよ」
悪戯が成功した餓鬼みたいに笑ってまた、蒼志自身も新しいのを取り出して食べ始めていた。
言えよ。急に口に突っ込むな、びっくりするだろ。
大体俺の分買っておくとか、何だこいつイケメンか。
「蒼志って案外子供っぽいことするよな」
「そうか?」
「そう、人をびっくりさせたがる」
「ま、お前限定かもな」
「何でだよ」
「さあ、知らね」
「あっそ」
しゃりしゃり、冷たい音を鳴らして、住宅街を歩く。
そういえば、こういうこと、したことないんだよな、俺。
多分、こいつも、無いと思う。
立場だとかそう言うのが、本当は俺達似ているのかもしれない。
「あ、はずれた」
「俺も」
ま、早々アイスなんてあたるものじゃないか。
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