俺の妹は、世界一可愛いと思う。
身内だから多少の贔屓目があったとしても、絶対可愛い。
「あのね、きょうね、さくらおえかきしたんだよー、せんせいほめてくれたのー」
「そっかそっか、よかったなー、桜は絵上手だもんなー」
ツインテールに結った幼い子特有の柔らかい髪を揺らしながら、手を繋いだ俺の方を見上げた可愛い可愛い俺の妹。
今年から幼稚園の年長組に入り、4月で6歳になった、妹の桜。
高2になった俺とは11歳離れており、そしてほぼ俺が妹の面倒を見ている。
母は桜を産んですぐ、亡くなった。
病気とかじゃなく、交通事故だった。
そういう訳もあって、仕事で忙しい父に変わり、俺が妹の世話をしている。
それが苦に思ったことは…まあ無いと言ったら嘘だけど、それでも妹が可愛いから、全然良しとしておこう。
「でね、あのね、つーちゃんもかいたんだよー」
一生懸命手を繋いでいる逆の手で鞄を広げようとする姿とか…もう……ほんと可愛いな…!!
「桜、お兄ちゃんお家でゆっくり見せて欲しいかな」
「えー…」
「外じゃ風に飛ばされちゃうかもしれないからさ」
「うん、じゃあはやくおうちかえろう!」
やっべ、俺もう幸せすぎてやばい…何これ天使過ぎるだろ……。
仲良く手を繋ぎながら、小さな一軒家へと桜のペースに合わせて歩く日々。
俺にはこれが、ずっと日常で。
ただこの平和な日々さえあれば、他に何もいらないと、思っていた。
そう、この日、までは。
「あれー、つーちゃん、だれかいるよー」
「え?」
「わあ、がいじんさんだ!」
家の門の前。
綺麗な赤い髪をした、……所謂不良が、そこでぶっ倒れていた。
「桜、外人さんでも普通赤い髪のひとはいないと思うよ」
「つーちゃんものしりねー」
「はは、そうだね……」
とりあえず…この物体、どうしたもんかな。
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