あれから、数日。気付いたら梅雨に入っていた。
「つーちゃん、あっちゃんはこないの?」
「…今度、来てくれるって」
「うん!」
同じ嘘をつき続けて、数日。
雨合羽を着た桜は、嬉しそうに、頷く。
たった三日。
三日しか、会ってないはずなのに。
罪悪感というか、もやもやしたものが、ここのところずっと胸に溜まっている。
「つーちゃん」
「ん?」
「さくらね、あっちゃんに、おはなのかんむりつくってあげるの!」
「お花の冠?」
「しろいおはなでつくるんだよ」
ああ、シロツメクサで編んだ花飾り。
どうやら幼稚園の先生に教わったらしい。
あのひとも男だから似合わないんじゃないかと思ったけど、ま、不釣合いで面白いかもな。
「じゃあ、今度皆でピクニック行こうか」
「やったあ!」
だったら梅雨が明けるまで、俺はあれを捕まえなきゃいけない。
何たって、桜の喜ぶ顔が見たいから!
というわけで、今銀狼がどんな感じなのかわからない情報に疎い俺は、いつもの如く友人に相談する。
「今荒れてるらしいぜー」
「…マジで?」
「マジマジ、怪我とかもすごいらしいけど」
怪我しすぎだろ。喧嘩強いなら避けることをしろよ。
また桜が悲しむだろうが。
「学校きてる?」
「今日はきてるんじゃね?」
「晴れてるからなあ」
雨だと屋上に溜まれないから、梅雨時期は不良が少し減るらしい。
案外インドア派なんだな。
「つーかさ、知り合いなら佐藤の方が詳しいんじゃねーの?」
「いや、」
残念ながら、俺達は。
顔見知りってだけの状態だから。
天気は良好。
正に青春日和だね。
「今から友達になってくるわ!」
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