週明け、殴られた痕は幾分薄くはなったけど、やっぱり消えてはくれなかった。
そうすると当然、その怪我はどうしたって話になる。
で、大体の人が聞いてくる訳だ。
蒼志の所為か、って。
そういえば俺のこと探してる連中がいるって話も上がってたし、大雑把に言えばそれも間違いじゃない。でも実際に蒼志に殴られた訳じゃないから、違うとも言える。
ただ、先生にまでそう聞かれるとは思わなかった。生徒指導室呼ばれて、「まさか津田に……?」からの「じゃあ緒方か……?」っていう流れには正直笑ってしまった。
あのふたり、どんだけ印象悪いんだ。
誤解です、酔っ払いに絡まれただけです、こっちは反撃してません、みたいな説明して、先生には許してもらった。
蒼志みたいに外で喧嘩する生徒はちょいちょいいるから、そこまで大事にはならず、口頭注意のみで済んだのは助かる。
さぁ、これでようやく、穏やかな日常が戻ってくる、――はずだったんだけどなぁ。
「……何でお前がここいんの?」
放課後。学校を出たすぐそこで、宇月に出くわしたのである。
出くわした、ってよりも、待ち伏せされてたって方が正しい。
「いやぁ、ほんとはわかってただろ?俺が会いに来るって」
「近付くなって言っただろ」
「それは天使ちゃんにね。ツカサちゃんはダメって言われてねーし」
「今から桜迎えに行くんだけど」
「じゃあその途中まで」
ついこの間色々してくれた相手が、普通に会いにくるってどうなんだ。
宇月に関しては蒼志と緒方に任せてて、俺はその後どういう扱いになったのかは知らない。少なくとも、俺にこうやって気軽に会いに来ていいとはなっていないとは思う。
そういえば、その蒼志と緒方はまた話し合いがあるからって俺より先に帰ったはずで……その話し合い、確実に宇月のことも混じってると思うんだけど、当人がここにいるのって、やっぱりまずいんじゃないのかな。
「今俺さぁ、あいつらに追われててさー」
「やっぱり」
「多分すぐ見つかると思うんだけど、その前にツカサちゃんと話しておこうと思って」
「また殴ってどっか連れてくって?」
「やーだなぁ、もう誰からもそんなこと言われてないし、今の俺、実はちょっとだけ反省してんの」
「どうだか」
「えー、つれねぇなぁ」
誰が優しくしてやれるか。俺を殴って桜を悲しませて、許してないんだからな。
とは言いつつも、何でか無視出来ないのは、何というか……若干、前の蒼志に似てなくもない、っていうのがあるからだ。
宇月の方が断然頭おかしいし、怖いし、いっちゃってるとこあるし、意味わかんないし、蒼志の方が断然まともだし、見た目も似てないし、どこもかしこも似てないのに、ちょっとだけ。
何もかもが何でもいいって、思ってるあたりが、少しだけ。本当に、少し、似てるような気がしなくもない。
それから、ちょっと桜にも似てる。桜よりも子供に。ああ、まさしく子供か。善悪の判断がついている上で、悪さする子供。桜とは正反対で、かわいさのかけらもない、憎らしさしかないのに。
本当に、今まで生きてる中で一番嫌いだって言えるくらい、腹立ってるのに。
何で、そういうとこ気付くんだろう。変な共通点なんて見つけて、どうするっていうんだろう。
馬鹿だなぁ、俺。
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