いつどうやって弁当を届けるか。
教室に着いてから考えて、考えて、3限がもう終わって、4限目も終わってて、あっという間に昼休みである。
やっぱり不良が溜まる定番、屋上に行くしかないのか…?
……めっちゃ怖ぇ。
「何悩んでんの、さっきから」
「……なあ、不良って必ず屋上に居るもんかな」
「………はあ?」
「お前…どうしたんだよ」
「大丈夫か?」
そらどこもかしこも普通以外何者でもない俺が、急に不良なんて話を出したらビビるよな、わかるわかる。
普段学校で良く連んでる目の前にいる三人は、特に不良とか言う部類には程遠いので、余計不審に思ってるんだろう。
「ちょっと色々あってさ」
「まあうちの学校にいる不良つったら大体屋上だよな」
「屋上いなかったら教室とかか?」
教室……そういや何組か聞き忘れてたな。しくじった。
ほんと朝の内に弁当渡しておけば良かった。
「どうすっかなあ」
早くしないと昼休みも終わるし、俺も弁当食べたいし。
しょうがない、腹くくって屋上にでも行ってみるか、と決意すると、何だか教室が静かになっている。
「あ」
「あ」
おや。
教室の扉付近に居る不良と目があった。俺の探していた人間だ。ナイスタイミング。
………にしても、あの赤髪は目立つな。
周りを見ればあからさまに顔色悪くしてる奴もいれば、女子連中なんかは一部嬉しそうな顔をしている。
顔が良いからか。ちくしょう。
そしてこのままここで俺が弁当を渡すと、何か不自然な気がしてならない。
だって明らかに人畜無害な俺が、明らかに人畜有害な人間に弁当渡すってどんな光景だ。
俺だったら間違いなく突っ込むね。
ここはいっそ他人の振りでもしとくか…?
「あっくーん、司ちゃん居た?」
「居た」
「え、どれどれ」
「あれ」
はい、俺が司です。
他人の振りとか全然無理だった。
後ろに居たらしいもうひとりのイケメンとも目があって、…ああ、俺何か色々終わったな。
「男じゃん!」
「誰も女なんて言ってねぇだろ」
「そうだけどさー……ま、いっか、ちょっと司ちゃん、こっち来てー」
多分何も知らない人間から見たら、カツアゲにしか見えないんだろうなあ……。
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