呼吸が落ち着くのを待つ間、癪なことに、俺はやはり蒼志に抱きしめられたままだった。足元が覚束ないっていうのもそうだし、何より蒼志が離したがらない。
俺がもっとこう、女の子みたいに小さかったら、多分普通に持ち運ばれてたと思う。よかった、普通サイズの男で。
「あおしー」
「……ん」
普段通りに呼吸できるようになって、少しした後、蒼志の背をぽんぽんと軽く叩く。
蒼志は案外おとなしく身体を離し、今度はじっと俺を見下ろしてきた。
怖いって感覚はないけど、威圧感はある。
「決めた」
「え、何を?」
「慣れさせる」
「え、だから何を?」
「……」
どれを慣れろって言うんだ。あ、うん、わかった。顔見てわかった。何でこんな時だけ察しがいいんだろう、俺。
所謂、……いやぁ、慣れろって、言われても、なぁ。俺に言う?しかも今?
「……手加減はしてクダサイ」
「今、もう一回しとくか?」
「桜待たせてるから駄目」
「…家帰ってから」
「ええ………時間あったらね」
今はダメだけど、家に帰って、ふたりきりであれば、断る理由もない。
それこそ慣れなきゃいつまでたっても、って話だし。
「司」
「んあ?」
「お前、今顔赤い」
「…………うっさい」
そういうの、口に出して言うもんじゃないと思います。ええ。
恥ずかしいものは恥ずかしいんだ、察してくれ、ほんとに。
何で蒼志は笑ってんの、滅多にそんな、そこまでの顔しないくせに!イケメンめ!余計顔が熱い!!
というわけで、結局俺の顔の熱が引くのを待ったら五分は軽くすぎちゃって、部屋を出たら桜に怒られました。勿論予定通り、桜をぎゅうぎゅう抱きしめました。そうしたら、許してくれたので、お兄ちゃんはとても嬉しかったです。
ごめんね桜!愛してるよ俺の天使!!
20.足音
(どっかの不良も)
(すきだけどね)
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