いくら吹っ切れたって、いくら強がったって、根っこはどうにもならなくて、部屋を出た瞬間、心臓がばくばくと、今日一で大きな音を立てた。
今の今まで、自分が思ってた以上に大分気を張ってたらしい。
話し合いは終わった。
これ以上、息を詰めなくていい。
と、理解した途端、一気に色んなものが俺を襲ってきた訳で。
くらっとちょっとだけ眩暈。ぐらりとふらつきそうになった身体。
そんな俺の背を、とん、と蒼志が軽く叩いた。
「来い」
「え?」
や、俺、今すぐ桜ぎゅっとして癒されたいんだけど。
ここから見える桜も多分俺たちを見て嬉しそうにしてるし。
そんな俺(と桜)を余所に、蒼志は若干険しい顔だった。
俺は蒼志にせっつかれ、桜は後輩くん達が必死に引き留めてる。
きっと蒼志の顔が怖いから何かを察してそうしてくれてるんだと思う。
変に気を使わせなくていいのに……!
「蒼志」
「いいから」
何がいいんだ。何が。説明しろ。
よくわからないまま、腕を掴まれてずるずる隅っこに連れてかれる。
あの部屋とは違う、恐らく従業員のひとが使うらしい部屋の扉を蒼志が開いたと思ったら、ぐっとそこに押し込められた。
「何、……」
「黙ってろ」
勝手に連れてきてこの言い草。
抗議しようとして、それと同じくらいのタイミングで、とん、と俺は壁に追い詰められた。
あ。これ。アレ、だ。
何度か経験した雰囲気。
間近に迫る、蒼志の顔。
……ああくそ、綺麗な顔、してんなぁ。
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