不良とシスコン、時々天使 | ナノ


宇月はつまらなそうに目を細め、つん、と唇を尖らせた。

「はいはい、わかったよ、君の妹ちゃんには関わらない」

つまんねーの、なんて彼はソファーの背もたれにだらりと寄り掛かる。
その態度で周りぴりぴりしてるからやめてもらいたいんだけどなぁ。

「司ちゃん、ほんとにそれで終わらせるの」

特に一番ぴりぴりしてるのは緒方だ。どんだけ嫌いなんだ。
蒼志もどうも納得してないみたいだし、……デコピンくらいは良いかな。

「じゃあデコピン一発ね、それで終わり」
「ぶふっ」

噴き出したのは勿論目の前の男。
何だよ、折角の妥協案を。

腹が立ったのでその勢いで腕を伸ばし、親指と中指で輪っかを作って、中指で額を弾く。
べちん、と結構良い音がした。

「ッいってー、破壊力あんねぇ」

全然痛そうでもなんでもなく、宇月が笑う。

「あーあ、ほんと面白いね、ツカサちゃん」

笑う。

「……ね、関わんないのは桜ちゃんだけでいいの?」
「は?とりあえずそうだけど、でも蒼志とかにも、」

デコピンするために宇月のすぐ傍に俺が居るってことは。
俺の傍に、宇月が居るってことで。

伸ばした俺の腕を、掴むには、十分な。

距離、で。


「じゃ、ツカサちゃんにはちょっかいかけて良いってことだよね?」


顔が近付く。
近付いて。
すぐ傍に、顔が、あって。

唇に、何かが触れて。
触れた。


「……ッ!!」
「……あっは、男とちゅーしちゃった、きもちわりー」

慌てて振り払う。
同時に、目の前の男が吹っ飛んで。

それから。


「……つーちゃん、……?」


扉の方から、どうしてか、幼い子供の声が聞こえた。



19.新たな芽



(全部が全部)(わかんないことだらけだ)
(どうしよう)
(どうしたら、いい?)

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