一分程黙って俺を、俺達を見ていたスバルさんは、まずアンズさんの顔を見た。
「アンズ」
「何よ」
「好きだ」
そして、まさかの告白をした。
……こんな場で言っちゃうか、と思ったけど、まあ、それも彼なりのけじめなのかもしれない。
「……あんたねぇ、そう言えんだったら、あんなことしないでさっさとそれを言いなさいよ。馬鹿じゃないの。散々人巻き込んで、それであんたのこと好きになる訳ないじゃない。わかってんの?」
「……悪かった」
「そうね、あんたは相当悪いことしたのよ、スバル」
「悪かった」
「馬鹿なことはやめることね」
「ああ」
「……」
「……」
「……今は全くあんたのこと好きじゃないけど、嫌いでもないわ」
「……」
「そんなに私が好きなら、ふっつーに頑張って振り返らせるくらいのことしなさい」
さすがアンズさんだ。
一番根っこが強いのはアンズさんだと思う。
「津田」
「……」
「悪かった」
「……許さねぇよ」
ぎっと蒼志がスバルさんを睨み付ける。
俺が蒼志の服を引っ張ると、蒼志はこっちをちらりと見て、深く息を吐き出す。
「お前がこいつにしたことを許すつもりはない。一生な」
「……わかってる」
「……ただ、受け入れはしてやる」
「……」
「司がそれで良いなら、とりあえずその言葉だけは聞いてやるよ」
蒼志なりの譲歩、らしい。俺のことで怒ってくれてるから、俺も何も言えなかった。
それからスバルさんは俺を見て、ソファーから腰を上げた。
そして。
「悪かった」
少しだけだけど、頭を下げた。
「……」
まさかそこまでされるとは思ってなくて。
いや、うん、反省してくれた、ってことなのだろうけど。
「……ええと、はい、ありがとうございます」
「……何でお前が礼言ってんだよ」
さっきの仕返しか、蒼志が俺の脇腹を肘で小突いてきた。
何だよ、だって仕方ないだろ、びっくりしたんだから。
「変な奴だな」
スバルさんが少しだけ笑う。元々綺麗な顔してるんだから、そんな顔の方が似合うのになぁ。
穏やかな空気。
「あっはは!大団円、って訳だ!」
それをぶち壊したのは、案の定、宇月だった。
← top →