どんな話し合いをしているのか、気にならないと言えば嘘になる。
桜とテレビを見て、色々お喋りして、それでもいつあのふたりの話が終わるのか、いつ二階から降りてくるのか、リビングの扉の方ばかり見てしまって。
「つーちゃん」
「ん?」
「つーちゃんは、ほんとうに、おでかけしない?」
「うん、桜と一緒にいるよ」
……何て駄目な兄だろう、俺。桜を不安にさせて。もうそうさせないって決めていたのに。
にこにこ笑う桜に合わせて、俺もどうにか笑顔を作る。
さあ、何して遊ぼうか。
そう考えた矢先、扉が、音を立てて開いた。
「……」
「……話、終わった?」
「ああ」
不機嫌そうに顔を歪めた蒼志と、困ったように笑う緒方。
何かあったんだろうか、いやあるからこそふたりで話したんだろうけど。
「これから出掛ける」
「……ん、行ってらっしゃい」
「司ちゃんは、やっぱり無理?」
「当たり前だろ」
桜がいる。ひとりには出来ない。
俺がはっきりそう言うと、蒼志と緒方はわかった、と言って、ふたりして玄関の方に向かい出した。
「……あっちゃんも、りっくんも、かえっちゃうの?」
「うん、今日は」
バイバイって。
伝えようとしたら。
「……やだ」
誰よりも不機嫌な桜が、頬を膨らませていた。
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