不良とシスコン、時々天使 | ナノ


「俺がお届け物でーす!」

ピンポーン、とチャイムが鳴って、オムライスを食べる手を止めてインターホンを取れば、お届けものです、の一言。
桜は蒼志に相手をしてもらって、印鑑を手に取り玄関に向った。
扉をあけると、宅配便の人でも何でもなく。
緒方が笑顔でそこに立っていた。

「……お帰り下さい」
「ちょ、ちょっと待って!司ちゃん!お願い閉めないで!!」
「受け取り拒否します」
「そんなこと言わないで!ね!!」

インターホン越しだと声が違って聞こえて、全く気付かなかった。
ちょっといらっとしたので閉めようとすれば、ドアの隙間に足を挟まれて阻止される。どこの悪徳セールスだ。
あんまり強くやりすぎると怪我をしかねないから、ある程度加減はしてるけど……食べてるところを邪魔された仕返しってことで。

「ご飯中だったんだけど」
「あ、ごめん」
「……まだ桜が食べてるから、それまで大人しくしててよ」
「あれ、桜ちゃん幼稚園は?」
「今日は休ませてる」
「あー……そっか」

緒方が来たのは、多分昨日の話をするためだろう。
仕方なくドアを開けて、家の中に入れた。

「あっくんいるよね?」
「桜とオムライス食べてる」
「オムライス……」
「桜がうさぎさん描いてくれたの食べてる」
「うさぎ……」

何か一生懸命笑い堪えようとしてるけど、ばればれだからな。
唇もごもご動かして必死に噛み殺してるみたいだけど、ばればれだからな。



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