いつもは幼稚園で絶対に見れない子供向けのテレビ番組。俺も勿論、見たことがない。
桜はそれをずっと俺の膝の上に座りながら、にこにこと機嫌良さそうに見ている。隣には蒼志がいて、くありと欠伸をしては眠そうに、でも一応起きて一緒にテレビを眺めた。
まるで休日のような平日。
お昼は何にしようかなぁ。ご飯余ってたかな。ああ、この前の、タッパーにつめて冷凍庫に入れておいたっけ。
11時を回り、そろそろ昼食の準備を、と思って桜を一度抱き上げて床に降ろして立たせれば、桜はびっくりしたみたいに目を丸くさせ、それからすぐに泣きそうに顔を歪めた。
「つーちゃん、どこいくの…?」
「ご飯作るだけだよ」
「………」
まるで逃がさないとばかりに、桜は俺の服をぎゅっと握る。
…かわいいけど、うれしいけど、いや、でもご飯作らなきゃだし。
「ほら、台所行くだけだからね?」
「……」
桜は幼いけど、俺の言い分はわかってるんだろう。むすっとしたまま手を離して、むぐむぐと唇を動かし我慢してるらしい。
「……桜」
おや。
今まで成り行きを見ていた蒼志がそんな桜の頬を軽く摘み、ぐにぐにと痛くない位に遊ぶ。
「あう、…あっちゃん、なぁに」
「やらけぇ」
「あう、う」
多分、…蒼志が構ってる間に作ってこいってこと、かな。
俺も桜のほっぺむにむにしたい。
いやいやいや、ここは蒼志の好意を無下にするわけには、ああいいな蒼志羨ましいちくしょう。
「…なんでお前までそんな顔してんだよ」
「だって!」
「はいはい、お前も後で構ってやるから」
「違う、そっちじゃない」
わかっていってんな、こいつ。まあ、構ってくれるなら構われてやらないこともないけど。
「もー!あっちゃん!めっ!」
「悪い悪い」
「しかえしー!」
くそ、別に、そんな、俺も仲間に混ぜてほしいとか、そんな…!
さっさと昼ごはん作ろう!
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